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 文化庁が今年1月に発表した新しい委託事業「障害者による文化芸術活動推進事業(文化芸術による共生社会の推進を含む)」の「共生社会の実現に向けた文化芸術プロジェクト」に、私どもの「オイリーカート・メソッドを学ぶ―知的障がいや重度重複障がいの子どもと家族のための多感覚演劇を創る人材育成事業」が採択されました。

 ホスピタルシアタープロジェクトの活動が知られるにつれ、「来てくれないか」という要望が寄せられるようになりましたが、10人を超えるカンパニー編成のため、東京ならびに近郊を離れた他の地域へお伺いして、上演を行うには、交通費だけでも膨大な金額になってしまいます。1公演当たり、6家族という、そもそも限られた入場料収入しか得られないビジネスであるため、公的助成などを得ても、実現不可能と言わざるを得なかったのです。「どうしてうちの地域では鑑賞できないのですか?」というご家族の悲壮な声に、零細なNPO法人としては何もできないもどかしさに悶々としてきました。何とか資金調達し、やりくりして、一度はうかがえたとしても、継続することは、まったくもって不可能…。

 2016年秋、日本財団のご支援により、英国のオイリーカートからティム・ウェブ&アマンダ・ウェブ(クレア・ド・ルーン)をお招きした際、東京だけでなく、仙台のNPO法人「アートワークショップすんぷちょ」でもセミナーとワークショップを実施いたしました。東京での開催には、地方からも多くの参加者を得ました。また、すんぷちょは、以来、継続的に障がい児のための多感覚演劇を提供し続けています。これらの「事実」目を向け、一過性のツアーではなく、その地域で継続的に活動を行いうる人材を育成することのほうが、本質的に実効性をもつのではないかと考えるようになりました。そんな折に文化庁が新たな委託事業に着手し、それを現実にできる機会を頂戴できることになりました。

 ティム・ウェブ&アマンダ・ウェブ夫妻にも快諾をいただき、2019年9月、再び東京でセミナーとワークショップを開催いたします。二人の子どもを思う心と、彼らが抱き続ける子ども心が炸裂するものになると確信しています。

 

 平成31年3月29日、文化庁は、障害者による文化芸術活動の推進に関する法律(平成30年法律第47号)第7条に基づき,「障害者基本法」及び「文化芸術基本法」の理念や方針を踏まえ,障害者による文化芸術活動の推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図り,文部科学省及び厚生労働省が策定するために、「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」を発表しました。

 その基本的な計画に描かれた施策の方向性のなかに、「鑑賞の機会の拡大」が盛り込まれました。

 

  • 障害特性に応じた利用しやすい環境整備の推進

  • 適切な対応ができる人材の育成

  • 地域における鑑賞機会の創出

 

 とかく障がい者自身による芸術活動が強調されるなかで、鑑賞すら叶わない子どもたちが多くいることを思い、まさに私どもの願う方向性が盛り込まれたことは、喜びであり、同時に、絵に描いた餅にならないよう、零細NPO法人としても、できる限りのことを努めねばならないと、強く心しております。

特定非営利活動法人シアタープランニングネットワーク

代表理事 中山 夏織

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